俺のこの焦燥なんて知る由もないような空気感で登場され、カチンとくる。
相手が相手だけに、ますますイラッときた。
「ボス、ただいま到着致しまシタ。自分のミッション、無事完了デス」
「玲於奈、早速だけど」
「聞いてますよ。ヤツの鴆毒三本分。了解デス」
そう言って、玲於奈…もさ男はこっちにやってくる。
なずなを抱えたままの俺の方へと。
思わず一歩後退してしまう。
「すみません。なずなサンをこっちに寄越して下サイ」
「………」
素直に言うことを聞けばよいもの。
俺は何故か、黙って応じることが出来なかった。
なずなを渡すどころか、むしろその手に力が入る。
その状況に、玲於奈は首を傾げている。もさっと。
「時は一刻を争う状況ですヨ。くだらない意地を張ってる場合じゃありません」
「…あっ!」
しかし、俺が抵抗する間もなく。
もさ男は、俺の腕からなずなをひょいと軽々取り上げる。
くだらない意地…?
「…くだらない意地って、何だコラァァッ!」
「伶士くん!」



