だけど、そんなこと構っている暇はない。
早く、なずなを病院に連れて行かなくちゃならないんだ。
歩みが遅かろうが、体が重かろうが、俺のことなんてどうでもいい。
なずなを抱き抱えたまま、ノロノロとここを立ち去ろうとする、そんな俺を。
屋上に残された術者の皆さんが、その場に立ち尽くして唖然と見つめていようが、構っちゃいない。
もう少しで辿り着く出口の付近には、兄貴が立っている。
「伶士くん、どこ行くのかな?」
目の前に菩提さんが現れた。
さっきの散々な悪者ヅラはすでに失せていて、いつもの冷静沈着穏やかな雰囲気に戻っている。
あの菩提さん、怖かったもんな。ちょっとホッとするわ。
「…すみません、菩提さん。なずなを病院に連れて行きます」
「病院?」
「はい。俺が責任持って病院連れて行くんで」
「…伶士くん、大丈夫。気にしないで。こっちで処置するから大丈夫だよ。病院もこっちで連れて行くから」
「………」
「…伶士くんが、責任を感じる必要はない」
俺が責任を感じる必要はない、と…?



