なずなは『最期』と、何かを言い掛けたけど。
こんなところで、最期だなんて許されない。
死なせない。終わりになんかしない。
だって、俺達。やり残していることあるんだ。
四月になったら、一緒に肉食べに行くし。
それに、聞きたいこと、話したいことがたくさんある。
おまえのお父さん、俺知ってるよ?
親父の友達で、すげーカッコいいおじさんだったって、子供ながらに思ってた。
昔、小さい頃、俺達出逢ってたんだよ。
遊んだことあるんだよ。
え?覚えてないの?とか。
それと…さっき、黒い翼の彼が言っていた、ボディガード未だ継続している件とか。
俺はいったい何者なのか、とか。
あと…これが、一番大事なこと。
俺…おまえの気持ち、まだ聞いてない。
だから、このままじゃ終われない…。
(助けるんだ…)
なずなを抱き抱えたまま、ゆっくりと出口へと向かう。
急ぎたいのに、なんか体全体が重くて、足が動いてくれない。
ただ見てただけの人間なのに、何でだろう。



