(…ダメだ…ダメだっ!)
まさかの、もしもの未来が頭に過ってしまう。
払拭したくて、頭をぶんぶんと振った。
もし、ここでなずな、おまえがいなくなったら、どうするんだ?
だって、俺達まだ、何も…ああぁぁっ!ダメだ!こんなところで、いなくなるのは!
混乱しかける頭だが、腕の中の異変にはハッと気付く。
「…れ…いし……」
ほぼ消えかけた、か細い声がした。
色を失いかけた唇が、僅かに動いている。
「なずなっ…!」
意識がある…!
ホッとして肩の力が抜けた。
…しかし、それも束の間。
(…え?)
なずなと…目が合わない?
こっちはしっかりと上から覗き込むように、なずなを見つめているのに。
なずなの目は俺の向こうを見ているようで、目の焦点が合っていない。
…まさか、相当ダメージが深いとか?
不安が過ぎるが、そんな中でもなずなは…。
「…れい……伶士…」
うわ言のように、俺の名前を呼んでいる。
よろよろと手を伸ばして…。



