焦燥なのか、怒りなのか後悔なのか。
様々入り混じった感情が、腹の奥から怒涛に流れて声と共に吐き出たような気がする。
「…なずなっ!…なずなぁっ!」
倒れたまま動かないなずなの元へ、咄嗟に駆け出す。
足がもつれ、滑ってよろけそうになりながらも、必死にその場へと飛び込んだ。
「…なずな!」
辿り着くと、膝を着いて地に倒れたその身体を抱いて起こす。
だが、腕の中で身体がグラッと揺れていて、もう体が脱力していることを察すると、焦燥が更に込み上げてくる。
胸にはまだ、あのカラスの羽根が刺さったままだった。
「…なずな!なずな!…なずなっ!」
何度も呼びかけて揺すっても、反応はなくて。
なずなが俺を庇って攻撃を受けたとか、信じられなくて、信じたくなくて。
もう、言葉が出て来なくて、名前を呼ぶしか出来ない。
「なずな!…おい、なずなぁっ!」
抱き上げた身体は、汗をいっぱいかいていて、冷たくて。
目を閉じたままの顔色も、青白くて。
そんなことに気付いて動揺しては、必死に名前を呼び続けていた。
まさか、このまま死…。



