菩提さんが気付いて、声を出した時にはすでに遅く。
黒い翼の彼は、ずっと手にしていたものを、俺の方を見たまま。
俺に向けて大きく振りかぶり、ヒュンと音を立てて…投げ放った。
先程突きつけられた…あのカラスの羽根を。
何で、俺に?!
…と、思う間も、彼の攻撃に反応する間もなく。
(え…)
目の前に突然、人影が走って、飛び込んで来て。
黒い翼の彼の姿が見えなくなる。
巻いた髪を靡かせて、俺に向けているその背中は。
紛れもなく、なずなの姿だった。
だけど…。
(あ…)
その後ろ姿は、足元から崩れ落ちていく。
(あぁっ…!)
ぐらぐらと崩れた体は、膝を付き。
また、グラッと大きく横に倒れ込んだ。
(ああぁぁっ…!)
倒れてゴロンと仰向けになったその胸の真ん中には、あのカラスの羽根が突き刺さっていたのだった。
胸が…刺された?
俺に向けられた羽根を、俺から庇って受けたのか?
その光景から事態を悟った時。
「…ああぁぁっ!な、なずなぁっ!」



