「…やあ、今晩は?」



その声を背後から感じて、気付いた時にはもう遅かった。

咄嗟に振り返ろうとした時には、すでに背後を取られ、カラスの羽根の鋭く尖った羽軸の先端を目の前に突き付けられる。

結界やなずなを襲った、同様のモノ…!



「…もう、あんな連中、相手にしてられない。…橘伶士くん、もう、僕と一緒に行こうか?」



穏やかな口調なのに、殺気の混ざった声。

わかる。俺の背後を取っているのは…黒い翼の彼だ。



背筋が凍る。

目の前にある、羽軸の鋭い先端が光っていて。

一歩でも動けば…刺される。



「い…行くって、どこに…」

「僕の仲間がいるところ。今日でだいぶやられたけど、まだいるからね…?」

「な、何で俺なんですか…?」



何で、度々この彼に狙われるんだ?

俺がいったい、何だっていうんだ?



なずなが、俺をボディガードしているからか?

…いや、その話、何なんだよ。

まだ契約続いてるとか、総本山の命令とか。

俺を護衛するのが、いったい何だっていうんだ?