この光景、今までにいくらか見たことはあるが。

自ら黒い羽根へと姿を変えたのか?



「やっぱり!…哲太くん!」

「大丈夫、任せて。……羅伽蛇!」



なずなが慌てて振り返り、川越さんに呼び掛けるが。

川越さん的には準備万端だったらしく、すでに侍らせていた大蛇が、消えかけの菖蒲鬼へと襲いかかる。

勢い良く飛び掛かっていったが、菖蒲鬼の真ん前でふと姿を消してしまった。



「…闇に溶け込む、紫暗の瞳…」



黒い羽根に姿を変えて逃げようとする菖蒲鬼を中心に。

黒に近い紫色の閃光で、円が描かれている。



「…はっ!」



菖蒲鬼も気付いた時には。

円の中を這う、大蛇の姿が。



「摩睺羅伽『相殺』…【蛇卍】(へびまんじ)」



声に反応して、大蛇がカッと強く光る。



「ああっ!…ぎゃあああぁぁぁっ!」



強い閃光に飲み込まれて、その中に人影がフッと映るが。

響く悲鳴と共に光が治まる頃には、その人影すら無くなっていた。



消えた?

…いや、消したのか?

跡形も無く…!