「…『真陀羅朱霊華』!」
爆発的に緋色のベールが拳から吹き出す。
そして、その拳を一気に相手の腹に叩き付ける。
轟音で悲鳴は掻き消され、菖蒲鬼は後方に吹っ飛び、ゴロゴロと転がっていった。
「うっ、うあぁぁっ…」
地に倒れたままの、菖蒲鬼。
体をピクピクさせながら、ゲホゲホと咳き込むが、尋常じゃない嘔吐の音まで聞こえていた。
あぁ、これはひょっとして…。
…一応女性だから、可哀想。
咳き込みと共に、口から戻されるものは。
あの、黒い羽根…。
「な、何なのよ…私だって、人間の一人でも口にしてれば…!」
吐き出した黒い羽根を口元に付けたままで、ゲホゲホ咳き込む。
そんな負け惜しみを言いながらも、菖蒲鬼はなずなを睨み付けている。
「…あっ!」
しかし、菖蒲鬼が力を振り絞ったのか、勢いで杖を振り上げる。
すると、驚いたことに。
菖蒲鬼の体そのものが、足の方から徐々にサラサラと砂状になって消えている…?
そして、その砂は。
黒い羽根へと姿を変えていた。



