杖と拳、双方の押し合いを。
押しては、退げられ。
接触している拳と杖からは、電気のショート音のようなパチパチとした火花が更にも増して音を立てていた。
「くっ…これが人間の力?…どうなってんのよ!リグ・ヴェーダ!」
杖でなずなの拳を防御している菖蒲鬼の最初の一言は、黒い翼の彼に対するクレームだった。
自分の想像以上だったのだろうか。
遠くで傍観している彼は「あははっ」と笑っている。
「…そいつをただの人間と思っちゃいけないよ?『緊那羅』の従者だ…」
「はぁ?神力?!じ、冗談じゃないよ!」
クレームを付けた隙に、仕掛けたのはなずなの方だった。
「…ふんぬぬっ!」
拳を纏う、朱色のベールが膨れ上がって色濃くなっていく。
まるで、違う華へと姿を変えるように。
力が増幅したのか、菖蒲鬼がやや押され気味になっていた。
なずなは、不敵に言い放つ。
「…あんた強いんだよね?…でも、悪いけど。その力を発揮することなく抹消させて貰う」
「な、何ですって!」
「…『真陀羅朱霊華』!」



