「…『開印』…」



だが、押し合いの光景の傍では、黄金の帯状の光がわんさかと溢れ出ていた。

…しかし、今までと違うのは。



「…暗黒に捩れる空五倍子(うつぶし)の鱗よ、闇を司る神の加護を受けし、神童・川越哲太の名に置いて命ずる」




川越さんの文言に反応して、黄金の帯は一斉に紫暗へと姿を変える。

共に流れも変え、紫暗に輝かせた帯は天から地へと這いずるように、蠢く。



「…出でよ、守護神。闇で絞殺せ…『羅伽蛇』」



すると、地を這う紫暗のオーラは、蠢いて形を成していく。

帯は細長い厚みのある立体となり、表面には鱗。

濃く色味のある灰色の鱗は、艶がかっていて。

オーラの先は、頭部を成す。丸いフォルムに、開けた口には二本の光る鋭い毒牙を見せていた。



蛇だ…。



オーラが蛇の体そのものとなり、超特大となって、主を護るかのように、地を這い続ける。

しかし、特大の大蛇をお呼びになられたはいいが。

川越さんご本人は、大蛇を侍らせながら、何を仕掛ける様子もなく。

そこに突っ立ったまま、なずなと敵さんの押し合いをただ傍観している。