八つ当たり気味に声を張り上げる、黒い翼の彼。
背中の羽根をバタバタ動かしている。
と、思ったら、それはどんどん激しくなり、のたうち回っているかのように、獰猛な動きになっている。
それはまるで、怒りを表現しているかのよう。
「…おまえなんか、相手にしてられないよ?『乾闥婆王』の従者?」
何度も翼をバサバサしているせいか、辺りには細かく小さな黒い羽根が舞い始めた。
「…そんなに、ボコボコやっていたいなら、こいつとやり合えばいい」
すると、彼の獰猛に動く黒い羽根の中から、黒いモヤが徐々に吹き出していた。
そして、黒いモヤは一箇所に集まり、大きめの人のカタチを象る。
…いや、人、ではない。
「…さあ、僕の代わりに暴れてくれ?…団十郎鬼」
また、鬼だ。
赤褐色の肌色を持ち、頭にはフサフサのロン毛からマンモスの牙のようなツノが3本生えている。
一見、小麦肌のロン毛?チャラ男?
とも思ったが、その太く長いツノと筋肉ムキムキ丸出し上半身裸の見てくれは、明らかに人間ではない。
でも、今までお会いした鬼と比べると、人っぽい。



