俺のボディガードは陰陽師。~第四幕・夜に抗う~


「…ちっ!」



すると、黒い翼の彼が竜堂に背を向けて逃げ出した。

そして、背中の黒い翼が徐々にワサワサと動き始める。



「…拉致があかないね!」



そう言い捨てた彼の足が宙に浮き始めた。

翼をバサバサとはためかせ、体を上昇させる。

宙に浮き、遥か上から竜堂を見下ろすカタチとなった。



に、逃げた?



と、思われたが。

竜堂には慌てる様子がない。



「…上昇した!…哲太兄ちゃん、頼むよ!」

「了解了解」



そんな竜堂に手を振り返すのは、俺の横にいる川越さんだ。

しかし、了解と返事はするもの、何もする様子がなく、変わらずにバトルの様子を傍観している。

はて。



翼をはためかせて上昇し、竜堂の手が届かない空中へと逃げた彼。

竜堂は彼から目を離さず、地上から見上げていた。

右手には、拳を作って構えている。



「惑乱せよ…」



キィーンと音をたてて、光の塊の輪を拳が纏う。

その拳を、向けた方向は、宙に浮く黒い翼の彼だ。



「狂い酔え、光流…『闥婆法輪』!」



光が膨らみ、輪が拳を離れ、スピードをつけて彼の方へと放たれた。