拳の乱打から二歩ほど後退して逃れ、彼は右手をそっと翳す。
さっきの黒い羽根攻撃を仕掛ける時の仕草に似てる。
ひょっとして、何か術で攻撃を仕掛けようと…?
「…その手は食わねえよ!…光流!」
再び、竜堂の右足が光り出す。
一歩踏み込み、上段蹴りで彼の右手首をパーン!と弾いた。
「…くっ!」
彼はやられた手首を押さえて引っ込める。
いつの間にか不気味な笑みは消え失せ、苦痛表情と…先程見せていたイライラした表情が垣間見える。
「…おっ。術式阻止したね。感心」
「………」
この川越さんとやら、二人のバトルを、まるで大晦日の格闘技のように観戦しておりますが。
おいおい。
これは命懸けの戦いということを、忘れてはならない。
「…うん、良い表情。…そろそろイライラしてきたみたい」
「イライラ…?」
「うん。次のアクションを期待してるんだけど」
次の、アクション…?
彼の不敵な笑みが、味方ながらに恐ろしくもあった。



