彼女の張った結界である、光のカーテンが更にも増して軋む音をミシミシとあげている。

カラスの羽根が纏った黒いオーラが、こっちに吹き込んできた。



「…下がって!…桃李、結界引っ込めろ!」

「は、は、は、はいっ!」



眼鏡の男性の指示にオドオドとした返事をして、彼女は「むんんんっ!」と、またガニ股で膝を曲げて踏ん張っている。

すると、光のカーテンがサッと徐々にその姿を消していく。

そして、それと入れ違いに眼鏡の彼が、俊敏に前に出た。



「…羅伽蛇(らがじゃ)!…『大腹胸行結界』!」



すると、飛び出す彼の前に…蛇の姿が過ぎった。

しかし、その姿は一瞬で別の物へと変わる。

紫に染められた、背の高さ以上あって、厚みがある透明の正方形の板。

まるで分厚いアクリル板だ。



そして、スッと右手を前に差し出す。



「…『紫水晶』」



そのアクリル板をトンと押した。



彼の指が触れると輝きを発しており、スイッチが入ったかのように、途端に大きなアクリル板はガーッと前進し始める。

車の速度ほどのスピードで進むアクリル板は、すでに消えている光のカーテンがあった場所をも突っ切って進み。

「…何っ!」