黒い羽根の帯の中でジタバタしてみるも、締め付ける力が半端なく強い。

タダじゃ逃れられない!



すると、彼はそんな俺を見て、ニコリと笑った。

明らかに作ったような、胡散臭い微笑みで。



「…ね?…『夢殿』継承者の橘伶士くん?」



俺が…何?



何のことを言われてるか、サッパリわからず。

ごちゃっとなった頭は思考停止して、ジタバタしていた手足の動きすら止めてしまった。



だから…俺が、何?

俺、何なの?

その、俺がその『夢殿』ってやつで。

なずなはそんな俺を護衛…していたのか?ずっと。



ボディガード、まだ続いていたのか…?




「…おまえ、このおぉぉぉっ!」



なずなの雄叫びが聞こえて、ハッとする。

そこには、感情に任せてガバッと体を起こすなずなの姿が。

しかし、何かに反応したかのように「ああぁぁっ!」と悲鳴をあげて、すぐに倒れ込んでいた。

体を抱えて痛みに藻搔いているような…!



「あー。不動縛解ききれてないのに、無理矢理動こうとするからさ?って、動けること自体、ヤバいね。五体バラバラに千切れるよ?」