背後に気配を感じて振り向いた時には、もう遅い。
俺の後ろから、兄貴が続いてエレベーターの中に入ってきてしまった。
え…来ちゃった!
と、思ったらすでに扉は閉まっていて、兄貴は屋上階へのボタンを押していた。
すると、エレベーターはフワッと上昇する。
着いて来ちゃった!
「あ、兄貴…」
「伶士だけずるいよ?麗華のとこに行くなんて」
「ばっ…そんなんじゃ!」
「あ、伶士はなずなを追いかけていくの?じゃあ、俺達追いかけ兄弟だ」
「………」
嫌なネーミング…。
なんて気持ち悪い兄弟だ。
でも、もう仕方がないので、兄貴も一緒に連れていくことに。
…けど、兄貴。
わかってんの…?
ひょっとしたら、その向こうは危険かもしれない。
スマホをいじっている兄貴の横顔をチラッと見る。
っていうか、スマホいじってる場合じゃない状況になると思うんだけど。
どんだけ麗華さんに御執心なんだ、この男は。
麗華さんのことが一番大好き、ってことはわかるんだけど。
兄貴って、どうも…軽いんだよな。



