『…雷突槍!』



萌葱鬼が槍を翳してそう発すると、途端に雷光が槍全体を包むように現れる。

…術だ。

けれども、少しでも怒りに囚われていると、その分だけ隙が生じる。

こっちに取っては都合が良い。

…さあ、もっと隙を作って貰おうか?



その為に、あえて真っ正面から攻撃を…防ぐ。

人間ごときに防御された、なんてプライドをズタズタにして挑発するために。



「…我が身は我にあらじ、神の御盾を翳すものなり…」

『…何っ!』



萌葱鬼の雷の槍を正面に、そっと手を出して翳す。

地が裂けてオーラの壁が天に伸び、互いの間を隔てて防御。

金属で殴打した音と共に、バチバチッと火花が飛び散る。



『人間ごときが、障壁で我の攻撃を…!』

「…だから、おまえは負けるんだ」



障壁が消えると共に、間合いに入り込む。



「夜闇を払い、光を降ろす五芒の印」



右の人差し指中指の二本で、相手の額をそっと突く。



『…あ?…ああぁぁっ!』



萌葱鬼は叫び声をあげ、顔を覆いながら辺りを必死に見回している。

ヤツの視界を奪ってやった。恐らく暗闇の中で混乱しているに違いない。