さっきのことも思い出してしまい、更にずーんと落ち込む。



その時、竜堂が兄貴に「ちょっとごめん」と一声かけて、スマホの着信に出ていた。

立ち上がって、少し離れたところで「もしもし」と電話に出ている。



「…何?…うん?えっ…」



その会話に耳を傾けてしまう。

あ…そうだ。気付くのが遅かった!



術者である竜堂も、このホテルにいた。

ひょっとして、竜堂もなずな達と一緒に来ていたのか?!

これから起こる、何かのために?



しまった。それとなく聞き出せばよかった。

俺ってば、またうっかり…!



そうなると、ますます耳を大きくせねばならない。

集中して会話に耳を傾ける。



「じゃあ!…え?いいの?……うん、わかった。命令通り従う。…取り敢えず、桃李と合流しよう。ヤツはパーティー会場でメシ食ってるから……じゃ、会場で」



そう言って通話を終えたのか、スマホをジャケットのポケットにしまい、こっちにやってくる。



「頼智、俺もう行くわ」



そう告げられた兄貴は黙って笑顔で頷いていた。