わっ、兄貴!
気付かれた!
俺がそこにいるのがわかったのか、兄貴はご機嫌な笑顔で手を振ってきた。
そして「おいでおいで」と手招きされる。
何で呼んでんだ?
首を傾げてみるが、何故なのか何の見当もつかないため、呼ばれるがまま店の中に入り、兄貴の元へと向かった。
「兄貴、どこ行ってたの。挨拶回りもしないで」
「あ、いーのいーの。俺は一人で必要な人だけに挨拶してきたから」
「ふーん。で、何?」
すると、兄貴は隣の空き椅子を引いた。
「座って座って?一緒にコーヒー飲もうよ」
「え…」
コーヒー?酒じゃないんだ。
それもまた珍しい。
男二人で夜のパーティーにコーヒー…。
兄貴らしくない。
…と、その時、兄貴の向かいに座る男性の顔がチラリと見えてしまった。
(え…!)
「おぉー。久しぶりだな、弟よ」
「………」
その麗しのイケメンボイスで声を掛けられて、驚きのあまり絶句してしまった。
いや、俺、あんたの弟じゃないけど。



