春がすぐそこに近付いているとはいえ、北国の三月の夜はまだ寒い。

ブルッと体を震わせてしまい、急いで中へ戻った。

ロビーの暖かい空気を感じては、一息つく。

…嵐が去ってやれやれ、という意味合いも込めて。



豪華絢爛なロビーを何となく見回すと、人はまばらにいる。

今の俺みたいに会場を出て、一息つくのにソファーに座って談笑している大人たちもいた。

しかし、チープなホテルとは言っても、そこはやはりオガサワラリゾートで、チープさを感じさせないよな…と、思いながら、ロビーの煌びやかなシャンデリアを見上げる。



少し足を進めると、スペースは狭いがカフェがあった。

黒を基調としたモダンなデザインなので、一見バーにも見えるが、確か…麗華さん、カフェって言ってたよな。

そう思いながら、横目でそのカフェを見ていると。



(…あ)



そこには、兄貴の姿があった。

同じくスーツ姿の男性と、二人でお茶してる。

…兄貴が、男と一緒?

俺が見かける中でいつも一緒にいるのは、ほぼ女性なんだけど。珍しい。

しかし、ここにいたのか。

俺だけに挨拶回りを押し付けて…!