「舞絵、あまり大きな声を出すな!…俺の名前を大声で叫ぶな!」



この強烈娘にガタガタと騒がれたら、本気で公共の晒し者になる。

なので、まず舞絵に静かにしてもらわねばならない。

舞絵の前に出て、宥めようと試みる。

否応なしに『こっちにいらっしゃい』に応じるカタチとなってしまった。



しかし、舞絵の紛糾は続く。

今度は、俺と舞絵の攻防の始まり始まり。



「こ、これが騒がずにはいられますか!カトレア会の大事件ですよ!仲間が婦女暴行…!」

「いらぬ濡れ衣を着せるな!おまえが騒げば何でも大事件だ!頼むから静かにしてくれって!」

「伶士、あなた恥ずかしくないのですか!」

「…公衆の面前で糾弾されていることも恥ずかしいわ!」

「あなた、それで日本舞踊の愛しい姫君に顔向け出来るんですか?!誠意を見せなさい、誠意を!」

誠意?話が逸れてると思ったのは俺だけだろうか。



しかし、舞絵の一言で我に返る。



(…はっ!)



『日本舞踊の愛しい姫君』と言われて思い出す。

…この言い回し方もどうにかなりませんか。吹き出しそうになるだろ。