「…さて、お喋りはこれくらいにしといて。今日みんなに集まって貰ったのは他でもない。…ヤツが今夜、ここに現れる」


そう言って剣軌は、テーブルに自分愛用のタブレット端末を置く。

開いた画面は、先週に起こった出来事の有り様。

黒い羽根に埋め尽くされた、このスイートルームの写真。



「うわぁー気持ち悪いー」

「…これって、ひょっとしてこの部屋?」

顔をしかめる真凛の横で、哲太が少し乗り出してタブレット端末を覗き込む。

その問いには無言で頷いた。


「…恐らく、ヤツの狙いはこのホテル。…正確には、このホテルが建てられた地に眠る『紫の門』と、それを封印している『礎の石』のパワーストーン…」

「『紫の門』…」

「あの時と同じ…?」



…三年前にも、同じようにこの地に眠る『紫の門』を巡る争い、戦いが繰り広げられている。



『紫の門』とは。

この人間界と魔界の連絡通路。

陰陽師や術者の類が、退魔調伏で魔族を魔界に強制送還する際に術式で使用する物であるが。

魔族が人間界に来訪するのを防ぐため、強制送還以外の使用、長時間の開放は御法度とされている。