「…じゃあ、そろそろ始めようか。みんな、聞いて。そこのお菓子食べながらでもいいよ?」
開始、その一言で室内の空気に緊張感が増す。
自然と剣軌の周りに、誰もが集まった。
「改めて、今日は集まってくれてありがとう。神童全員、ってわけにはいかなかったけどね?」
「あ、あ、あのっ!」
「どうしたの?桃李」
突然会話に入ろうとしては、発言しようと何故か挙手をしている。
剣軌が優しく「いいよ?」と答えると、桃李は吃りながらも話し始めた。
「ゆ、ゆずらおばさまが今日退院したそうです!皆さんにくれぐれも頼むと伝言が!」
「あぁー。今日退院したんだ。15年ぶりの出産だもんね。命懸けだよ」
「母子共に元気だそうです!今日来れないこと悔やんでました」
「ははっ。ゆずらさんらしいな。…ゆずらさんにとっても、因縁の相手だしね?『マントラ』は」
「ったく。エース不在を狙ってあえてケンカ売ってきたんじゃねえのかと思うけどなぁ?あの性悪リグ・ヴェーダ」
「ははっ。そうかもしれない」
夏輝のそんなボヤキに、剣軌は可笑しくてついつい笑ってしまった。



