「っとに、緊張感ねえなー?これから大ヤマだろうがよ。久々にあの『マントラ』と対峙するんだぞ?」
トゥンカロンにはしゃぐ二人の乙女を見ていたら、一人気張っていたのが馬鹿馬鹿しく思えてくる。
一層の溜め息が出た。
「夏輝も食べよ?お腹空いたら戦えないよ」
「そーだよそーだよ!夏輝くんも食べよー!」
「あー。俺、それ無理。生クリームは好きじゃない。肉かクロワッサンがいい。ちなみになずも好きじゃないと思う。俺と一緒で肉派だから」
「えー」
すると、話題に上がっていた人物がこの部屋に戻ってきた。
部屋のドアがガチャリと音を立て、「おつかれー」と、その姿を見せる。
だが、何分か前にこの部屋を出た時とは、黒い細身の膝丈ドレスにハーフアップヘアと姿を変えていたため、女子たちからは「わぁー」と感嘆の声があがっていた。
「なず姉カッコいいー!きれー!」
「着替えて髪セットしてきたんだー!」
「パーティーだからね。普段の私服でウロついた方が逆に目立つから」
そう言いながら、ヒールのパンプスを脱いで中に入り、近くの椅子に手にしていた小さめのハンドバッグをポンと置いた。



