反射で下げていた頭を上げる…が。


(…ん?)


ぶつかった相手は急いでいたのか、俺の前からすでに立ち去っており、奥の階段室のドアを開けて、そのまま向こうへと消えていった。

しかし、すれ違い様に視界に飛び込んできたその顔は、知ってる人の顔で。

違和感を感じて、慌てて目で追った後ろ姿も、あの長身とガタイの良さで一目瞭然だ。

同時に、困惑する。



(…玲於奈?)



何故、ヤツがここにいる…?

この、関係者しかいないこの場に、何故もさ男?

まさか、実はどっかのセレブで招待客なのか?

なんて、推測を重ねるが。

わ、わからない…。



疑問でそのまま立ち尽くしていると、向こうから母さんが「伶士、どうしたのー!」と、こっちにやってくる。

ギョッとしてしまい、咄嗟に「い、いや、なんでもない」と答え、その場を離れて母さんのところへと向かった。

しかし、何故どうしてと疑問は消えず。

頭から離れてくれなかった。