それから、定刻通りの16時にオープニングセレモニーが始まる。

小笠原社長や、麗華さんがスピーチをしたのち、エントランス正面でテープカットが行われた。

親父の代わりにテープカットに参加したのは、うちの副社長だった。

セレモニー終了後に『社長の代わりなんて重責でした…』と、肩を落としている副社長に母さんが『お疲れ様でした』と、労いの言葉をかけたぐらいにしといて。



そんな副社長をも引き連れて、俺たちはこれからの祝賀会、パーティー参加のため、一旦控え室に戻って待機することになっていた。

控え室は最上階のラウンジ。

従業員に案内されて、エレベーターに乗り最上階へと向かう。



エレベーターが到着し、人の波に流されるように中から出る。

出たその先の最上階は、大きい天窓が並べらられていて、沈みかけの橙色の夕陽が差し込んでいた。

もう、陽が沈む。


その暖かみのある色に見惚れて足を止めていたが、少し距離が離れてしまうと母さんに「伶士、こっちよ!」と、促される。

「…あ、今行くよ!」

そう言いながら咄嗟に振り返ると、不注意で傍にいた人と肩がぶつかってしまった。

「…あっ、す、すみません!」

「こちらこそすみませんでシタ」