「……医者になる気は全く無かったな。その道だけは避けたかったし」 「お父様の影響ですか?」 「そう」 「でも、弟さんは医学の道に進んだんですよね」 「兄弟だからって、同じ考えなわけじゃないだろ」 「そりゃまぁ、そうですけど」 「……そっちの道は、弟たちに譲ったんだよ」 「譲った? え? なんでですか?」 しばらくの沈黙の後、先生は私から目を逸らして呟いた。 「────俺だけ母親が違うから」