「──このクラスの数学係は、誰?」



数学係に後で教材を取りに来て貰わなければいけないのを、くだらない質問で忘れるところだった。


元気よく返事をした男子が、隣に座る女子の手を取って高く掲げる。


……しかも、なぜか指を絡めて手を繋ぎ直すとか、なんだコイツら。



そう言えばこの男子生徒──見た事あるな。


あぁ、確か校内でも色んな意味で有名なヤツだ。


こんなヤツが数学係か、更に面倒が増えた気がする……。



と、脳内で悪態をつきながら隣の女子生徒を見る。



──、は?



今朝の、あの元テニス部の女子生徒だと、このとき初めて気がついた。

俺が副担任を受け持つクラスだったのか……。


……ってか、コイツらこんな教室で、クラス全員の前──しかも教師の前で堂々とイチャイチャするとか、頭おかしいんじゃないの?


こみ上げるよく分からない怒りに、俺は眼鏡の奥で二人を睨んだ。



「……数学係は、昼休みに数学準備室に追加の教材を取りに来るように」



辛うじてそれだけを口にして、俺はムカムカしながら教室を後にした──。