涙がなかなか引っこんでくれないまま

ふと、視線をテーブルに向けて見るとケーキが切り分けられた状態でお皿に乗っていた。



「俺の分のいちごもあげるからそろそろ泣き止もう 」


「れ、蓮、お母さんたち見ているから…」


ケーキを食べようとしたら、急に口もとに生クリームが少しついたいちごを持ってくる蓮…。

いちごは大好物だけど、恥ずかしい………。


それなのに、蓮はいちごを私の口もとから動かさない。


「結愛、大丈夫だからあーんして 」


「結愛、本当は嬉しいんでしょ。
蓮先生に食べさせてもらえて 」


「俺たちの前で恥ずかしがらなくて良いから 」

諦めない蓮と、ニヤニヤと私を見るお父さんとお母さん。


顔から湯気が出そうなほど、体温が上昇する中、パクリと蓮の指からいちごを食べた。



「おいしいっ ! 」


甘酸っぱい、いちごの味が口の中いっぱいに広がる。