夜色、線香花火



あたしの背後は海で、これ以上引けないことくらいわかっていた。あたし、泳げないし。


だけど、だから。




「火ぃ、つけるよ」


──うなずいた。


夜が似合う、慎太郎。


ずるいひと、慎太郎。


あたしが敵わない、慎太郎。


火の粉が跳ねて、海が揺らいだ。




まだ夜が、明けませんように。




End.