「ガルニエ王国…私、異国に行くのは初めてですの。とっても楽しみだわ」

翡翠色の大きな瞳を輝かせて、ヴァレンティーナは話す
薄らと赤らむ頬はカモミールティーで身体が温まったせいか

「少し暑いな、外出るか?」

「ええ良いですわね。
私も少しばかり風にあたりたいわ。」

初夏とは名ばかり、もうすっかり夏の気候だ

海上で暑さは緩和されるものの、身体はじんわりと汗ばむ

レッドは空っぽになったティーカップをテーブルの端に寄せ、ヴァレンティーナの手を引いて船室を出た

「ヴァーリャ、気をつけろよ」

足元が不安定な上に夜の船内は薄暗く視界が不明瞭だ

他の船員達は自室に戻ったのか、食堂でまだ騒いでいるのか、デッキには誰もいないようだ