「…独特な味わいだな」

見た目が紅茶の様なので味も同様に想像していたが、カモミールの独特な風味は少し予想外だった

「ええ、確かにハーブティーは好みが別れますね。お好みじゃありませんでした?」

ヴァレンティーナ自身もカモミールティーは初めて飲んだのか、コロコロと表情を変えながら、頬に手を当て味を楽しんでいるようだ

「いや、美味しく入ってるよ」

「それは良かったわ。本当ははちみつなんかで味を整えるのも良いのだけど、用意できなくて」

はちみつや砂糖は希少で、値が高いため専ら貴族の嗜好品である
最近は時折巷お菓子や紅茶などに入れて貴族の真似事を楽しむことが流行っているが、それでも金銭に余裕のある者しか手出しが出来ない代物だ
海賊船であるテテュス号には置いてなくて当然である

「次の港で探してみるか?」

次なる停泊地はイルミアの北岸、クォーツ港だ
大陸との貿易が盛んな港で、貴重な砂糖や香辛料も比較的手に入りやすい土地だ
時価によっては自分らで楽しむ分くらいは買えるかもしれない