「所縁あって、ここで船医をしておりますが、伯爵家とも遜色ない医療を提供できると思います。」

「まぁ。だから私の事がお分かりになったのですね。」

まあ、それもあります。とカートは答える

お抱えの医者(の卵)とはいえ、地方貴族の娘の名まで知識があるカートは生まれもそれなりに良い家柄だと窺える

船旅において病気が流行るのは最も忌避すべき事態で、カートの正しい医療知識と適切な処置はこの船の命綱ともいうべきか

「私に出来ることなら何でも申し付けください。お力になりますわ。」

ヴァレンティーナは淑女の礼をする
精一杯の敬意をカートに払ったつもりだ

そしてカートは苦笑する

「そういう所ですよお嬢様。
平民として過ごすおつもりならはやく馴染んでいただかないといけませんね。」

それを受けヴァレンティーナは美しく微笑み、そうね、と返すのであった