「どうして貴女がここにいらっしゃるのですか?

ヴァレンティーナお嬢様」


驚いて息を呑むが、彼はそのまま続ける

「レガート伯爵家のご令嬢である貴女が攫われたとなればあの港町は今頃大騒ぎの筈ですが。」

どうやらヴァレンティーナの素性はカートには筒抜けだったらしい

「この船で身分を隠されている事は理解しますが。
レガート伯爵領の港から乗り込んで来てヴァーリャ、と名乗る高貴な女性が現れればその筋に詳しいものなら直ぐに気づきます」


「…確かに考えが浅かったかも知れませんわ」

ヴァレンティーナは軽率な行動を恥じ、目を伏せた

「お言葉ですが、貴女はお分かりでないようですね。」