「ここです。」

カートがドアを開けば手狭な診療所ほどの施設があった

尤もヴァレンティーナのような貴族が診療所に出向くことはなく専属の医者を抱えてある

壁際には薬棚と分厚い医学書のようなものが立ち並ぶ本棚
3床あるベッドは清潔に保たれているようで、皺ひとつ見当たらない

本当に海賊船かと疑う程よく整えられたこの部屋は一重にカートの真面目さと医学への造詣深さを物語っている

「私は見ての通りこの船唯一の船医です。」

「はい、船医の皆さんがお元気でいらっしゃるのもカートの尽力のお陰なのですね。
素晴らしいお医者様のようで、尊敬いたしますわ。」

「まあ、そうですね。
貴女にお願いしたいのは書類の整理と暇な時の話し相手くらいなのですが…」

そしてドアがきっちりと閉められていることを確認した後、一呼吸置いて彼は言う