「カートさんもとてもお強くて、何度もヒヤヒヤしましたわ。」

決して嫌味ではなく、何度も鋭い切り返しの手を打たれて内心負けるかもしれないと思ったのだ

私もまだまだですわね。
これではまだお兄様には敵いそうにありませんわ。

「そういえば、ヴァーリャ嬢はしごと探してたんだったな」

「ジークさん、何かお仕事あるんですの?」

思わず立ち上がってしまって、椅子が音を立てて揺れる

ここが伯爵邸でなくてヴァレンティーナは命拾いした
もしマリーや侍女長ケイティの前で同じことをやらかせばタダでは済まなかっただろう

「カートのとこなら何かあるかなと思ってな。どうよ?」

ジークは気にする素振りもなく眼鏡の男を窺う

「カートさん、私にお手伝い出来ることありますか?」