簪の因縁などレッドの知るところではないので彼はヴァレンティーナの所持品を受け取り、そのまま髪に挿したのだが

その瞬間、ヴァレンティーナが眉間に皺を寄せたことが分かった

「痛かったか?」

「あ、いえ。こちらの事情です」

伯爵令嬢のくせにじゃじゃ馬で、海賊とも分け隔てなく明るく接する彼女だが、この時はじめて、こちら、という壁を張った

直ぐにふわりと微笑んで、ありがとうと礼を言う彼女はまた元の「ヴァーリャ」だった