壁際の机に向かい、ランプを灯し、本を開く

本は贅沢品の部類だが、他の船員達が酒を買い込み、夜街で女を買うようにレッドは新しい本を買い込んでいた


「レッドさん、寝ないんですか?」

いつの間にか着替えを終えたヴァレンティーナが傍に寄る

男物のシャツは彼女には大きく、肩がずり下がり、ズボンの裾は何重にも折り曲げてある

「おいで」

呼び寄せると無警戒で近くに寄る彼女の手を取り、指先まで隠れていたシャツの袖を折り返してやる

傷一つない白くて小さな手からはこれまで大事に育てられて来たことが伺えて、自分の所為で海賊船に連れて来てしまったことに罪悪感を覚えた