テテュスの箱舟

「分かったわよ我慢するわ。
身支度手伝ってくれてありがとうね」

文句は言うが、気遣いを忘れないのが少女の良い所だとマリーは思う

少しお転婆なだけで、根は育ちの良いお嬢様なのだ


少女は父親の部屋をノックする

「お父様、お呼びですか」

「ヴァレンティーナ。入りなさい」


ティーカップを手に少女を目にすると目を細めて微笑む男性はこの屋敷の主、グレイズ・レガート伯爵。
ヴァレンティーナの父親である

「ティータイム中でしたか?
お邪魔したならごめんなさい」

部屋にはオレンジペコの芳醇な香りが漂っている

「いや、うちのおてんば娘が身支度に時間が掛かってるというから一息つくことにしたんだよ。
まあ、とにかく座りなさい」

伯爵には少女の行動がすべて筒抜けのようだ

「ごめんなさい、お父様」