テテュスの箱舟

「そういえばレッドさんは、いつからこの船に乗っているの?」

「6つの時だな。海で遭難して親父に拾われた」

あの時の冷たい海水の感触を12年経った今でも覚えている

「それは…大変でしたわね。
ごめんなさい、不躾に聞いてしまったわ」

「気にしなくていい、昔のことだ。
俺はこの船に拾われて親父には感謝してんだよ」

死にかけの幼子を拾って息子のように育ててくれたターナーにはどれだけ憎まれ口をきこうとも、感謝しかないのだ

ベンチから腰を上げ、彼女の隣へと向かおうとした時、少しばかり大きな波が船に打ち付け、グラりと揺れた

「わっ…」

案の定バランスを崩すヴァレンティーナの肩を抱きとめる

「危ないから座って起きな」