「俺はいっこうに構わんけどな。乗組員の1人や2人増えたところで大した負担にはならん。
そうか、レッドは違うのか」
心の狭い男だ、とでも言わんばかりに髭を触りながら意味深な笑みを浮かべる
「お嬢ちゃん、俺の名はターナーだ。海賊船テテュスの名において君を歓迎するよ。よろしく頼む。」
「あ、はい、よろしくお願いします。」
こうなるとレッドはムッとしたように口を噤み、もう一度深いため息を付く
「分かりましたよ。
ヴァレンティーナお嬢サマ、汚い男共しか居ない辺鄙な船ですが我慢してくださいね。」
今度はヴァレンティーナがムッとする番だった。
気まぐれで人を振り回すとんだ我儘お嬢様だと思われているような気がしてならない
…確かにこれまでの経緯を鑑みればそう認定されるのも無理はないが
「してお嬢さん、その名前はこの船には馴染まないと思うが…」
確かにターナーの言うとおり、家出をしたというのに本名のままでは意味がない
