レッドは素早くブリッジに飛び移り、船長に拘束された(正しくは肩を掴まれているだけだが)ヴァレンティーナを横抱きにすると優しくごめんな、と囁いた

予期せず急に近づいた端整な顔に驚いて、固まっていると

「この女解放してやるから、受け止めろよ」


どうやら、人質としての役目を終えたヴァレンティーナを波止場に居る役人に向かって投げ渡すつもりのようだ

手荒な真似とはこういうことか、と納得するが、ヴァレンティーナを抱く腕は優しく、何故か安心感を覚える

「お嬢様、こちらに!」

役人のひとりがうでを差し出して彼女を受け止める準備をするが、ヴァレンティーナはもう港へと戻る気にならなかった

レッドにぎゅっと抱きつくと、思いついた言葉を叫んだ

「お父様によろしく言っておいて!
私少し家出することに決めましたわ!」