「お嬢さんひとりかい?」

突然声をかけられて驚く

振り向くと二人組の大柄の男が行く手を阻むように立っていた
比較的治安の良いこの町ではヴァレンティーナは伯爵令嬢として良くも悪くも有名だった

自分のことを知っていて声をかけてきたとは思えず、この町の人間ではなさそうだと考えを巡らせる

「連れがおりますの。
何か御用ですか?」

「連れなんて見当たらないようだけど、嬢ちゃんみたいな別嬪がひとりで歩いていると危ないぜ」

「俺らが一緒にいてあげるよ。」

お礼はちょっとだけでいいからさ、と強引に腕をつかまれる

こんなことなら不本意だけどあの男といたほうがまだマシだったなと思う

「結構です。
他のお嬢さん方を当たってくださいな」

突き放したような言い方をすれば破落戸達は気に障ったようで余計に強引にヴァレンティーナを連れて行こうとした

人目がつかないところまで来ると二人組は下品な笑みを浮かべる