ありえない
どうして私が…

父親の余計な一言の所為でラインハルトと2人で出かけるという最も忌避した事態に陥ってしまった

大袈裟だと言われるかもしれないがヴァレンティーナにとっては一大事だった



港の市場は人で賑わっていた
普段から活気のある街だが、貿易船やら旅客船が来航し、人の往来が激しい

普段は見かけない屋台や外国のお土産なども並べてあり、珍しい物に人々は興味津々だ

「ヴァレンティーナ嬢はなにか気に入ったものあるかい?」

「どれも可愛いらしくて迷ってしまいますわ」

なにか贈り物をしたいのか、ラインハルトはアクセサリーを売っている屋台へ近づく

「これはどうかな?美しい君にピッタリだと思うのだが」

手に取ったのは豪華な装飾の簪
金の台座に赤い宝石が飾ってある

「じゃあそれにしますわ」

要らない、と言いそうになって咄嗟に言葉を引っ込める

やはり気が合わないのは相変わらずのようで、ラインハルトと過ごすうちに精神的疲労が蓄積していくように感じていた