｢お嬢様！
どこにいらっしゃるんですかお嬢様！！｣

海の近い港町の外れにある伯爵家では今日も使用人の声が響き渡る

庭先で潮の匂いとそよ風の中、気持ちよさそうに眠っていた少女はのそのそと起き上がる

｢ん〜…。ふぁ、よく寝た｣

勢いよく伸びをして立ち上がるとワンピースに付いた土をパンパンと払う

｢あ、お嬢様、またこのような所で寝ていらっしゃったんですか。｣

咎めるような口調で少女に駆け寄るのは伯爵家に仕える侍女のマリーだ

｢あらマリーどうしたの。｣

｢どうしたのじゃありませんよ。
旦那様がお呼びです。｣

レガート伯爵は小さな港町を治める地方貴族であり、地元民からの人望も厚い