「でもね。何回想いをぶつけても駄目だったし、檜の気持ちは一向に変わらなかった。
先月、檜があの歌をリリースするって聞いて、ようやく踏ん切りがついたの」
「‘Flower’か……」
「そう。あの歌を出す意味、伯父さんならちゃんと気付いたはずだよ?
……新曲として‘Flower’を出すって聞いて、それが過去に聴いた事のある歌だ、って。伯父さんなら気付いたでしょう??」
「……茜」
「最初から分かってたんでしょう??
檜が彼女の為だけに作ったあの歌を、今になってリメイクして正式に売り出す。檜が何でそうしたいって言ったか、伯父さんなら」
「……そうだ、分かってた」
ーーえ。
「昔、FAVORITEをデビューさせるかどうか、高村のライブハウスに聴きに行った時。あの歌だけ特別な思い入れが有るような気がしてやけに耳に残った。
……ああ、こいつ恋してるのかって、すぐに分かったけどな」
ーーそうだったんだ。
何にしても、いつでも僕の気持ちは周りにバレてしまうんだな。
「今回歌詞を少しいじっただけで、あの歌を出すと聞いて、勿論反対する気持ちが無かった訳じゃない。
……けど結果的にはOKを出した。
あれは待ち合わせの歌だろう?」
社長の声はどこか得意げだった。



