カサイは僕に対する復讐心で取材に応じているのかもしれないが、もしかしたらある程度の見返りを求めて情報を売っているのかもしれない。
ロンドンで聞いた幸子の言葉を思い出す。
ーー「金銭面で言ったら、あたしよりしんどいのはあの人の方だから。式のキャンセル料だけで無く、新居の問題も有るから。どこかで借金する事になるんじゃ無いかって」
金銭的に追い詰められているカサイが、僕に対する復讐だけでここまでの事実を漏らしている事に、今では違和感を感じていた。
と言うのも、全て幸子が悪く言われる結果に繋がっているからだ。匿名性の高いネット掲示板では、ともすれば幸子への殺害を促すような文書まで投稿されている。
カサイが幸子の裏切りに対して、未だに怒りを募らせていれば話は別だが、雑誌を読む限り、僕に対する恨みが証言の節々に見て取れた。
以前、慰謝料を払えと脅迫された時。払った所で過去をバラされないという保証は無いし、僕という個人がお金を払う行為自体が問題になる、と。カイに止められた。
でも、過去の事実をここまで晒された今、その問題はほとんど効力を無くしている。
カサイの人生に横槍を入れた分の謝罪ぐらいは、やはりするべきなのかもしれない。



