ボーダーライン。Neo【下】


 そう、夫である内田くんの携帯番号だ。

 だから週刊誌の記者を名乗って美波が電話をしたら、彼は嫌がるだろうと思った。

『……そっか、仕方ないね。じゃあ住所だけ送って貰える?』

「あー……うん」

 ーー会いに行くんだよね? 二人に。だったらあたしから先に口利きしておいた方が良いよね?

『それじゃあ。頼むわね?』

「あ、美波っ!」

 今にも電話を切ろうとする美波を、呼び止めた。

『なに?』

「会いに行くんだよね? その、家まで。……あたし、」

『今は何も聞かないで?』

「え?」

『サチにとって悪いふうにはしない。あたしはサチの、力になりたいだけだから』

 ーー力に……?

 あたしは親友の励ましにも似た言葉を思い、小さく微笑んだ。

「……ん。分かってる、だから何も聞かない。そうじゃなくてね?」

『……うん?』

「家に行くんなら、あたしから前もって連絡入れておこうか? その方がスムーズにいくと思うし」

 あたしの提案を、美波は喜んで受けてくれた。

 それじゃあ、と言って早速電話を切り、葉書に載った番号を頼りに電話を掛ける。数回のコール音で繋がった。

『……あ、もしもし? どうしたの、サッチャン先生』

 ーーあら。あたしの番号、入れてくれてるんだ。

 内田くんの馴染み深い口調に嬉しくなり、あたしは笑みを浮かべながら美波の用件を伝えた。

「多分、何かの取材だと思うんだけど」と言うと、彼は二つ返事で了承してくれた。

 その後、何時だったら大丈夫かを知らせてくれ、あたしは美波に住所と訪問時間の都合を書き、メールを送った。

 ***