そう、夫である内田くんの携帯番号だ。
だから週刊誌の記者を名乗って美波が電話をしたら、彼は嫌がるだろうと思った。
『……そっか、仕方ないね。じゃあ住所だけ送って貰える?』
「あー……うん」
ーー会いに行くんだよね? 二人に。だったらあたしから先に口利きしておいた方が良いよね?
『それじゃあ。頼むわね?』
「あ、美波っ!」
今にも電話を切ろうとする美波を、呼び止めた。
『なに?』
「会いに行くんだよね? その、家まで。……あたし、」
『今は何も聞かないで?』
「え?」
『サチにとって悪いふうにはしない。あたしはサチの、力になりたいだけだから』
ーー力に……?
あたしは親友の励ましにも似た言葉を思い、小さく微笑んだ。
「……ん。分かってる、だから何も聞かない。そうじゃなくてね?」
『……うん?』
「家に行くんなら、あたしから前もって連絡入れておこうか? その方がスムーズにいくと思うし」
あたしの提案を、美波は喜んで受けてくれた。
それじゃあ、と言って早速電話を切り、葉書に載った番号を頼りに電話を掛ける。数回のコール音で繋がった。
『……あ、もしもし? どうしたの、サッチャン先生』
ーーあら。あたしの番号、入れてくれてるんだ。
内田くんの馴染み深い口調に嬉しくなり、あたしは笑みを浮かべながら美波の用件を伝えた。
「多分、何かの取材だと思うんだけど」と言うと、彼は二つ返事で了承してくれた。
その後、何時だったら大丈夫かを知らせてくれ、あたしは美波に住所と訪問時間の都合を書き、メールを送った。
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