母の手伝いが済んだところで、携帯が鳴った。ディスプレイを見ると美波からだった。
すぐに部屋へと引っ込み、回線を繋いだ。
「もしもし? 美波、どうしたの?」
美波とも、檜と同じぐらいの頻度で連絡を取り合っていた。逐一近況を話しているので、H出版社の記者が来た事も報告済みだ。
『ごめんね、サチ。急で悪いんだけどさ、教えて貰いたい事があって』
「……え、うん? 何? あたしで分かる事だったら」
美波の声はやけに慌てていた。
『その、何でか理由は聞かないで欲しいんだけど。水城 奈々ちゃんの……連絡先って分かるかな?』
「え? 水城さんの??」
『うん。個人情報漏洩だって文句は無しね?』
「……うん」
ーー何でだろう? 何で水城さんの? でも、理由は聞かないでって言ってるし。きっと美波の事だから、仕事に関する事ね。
とは言え、番号が分からない。
「あー……、えっと。あたし、携帯のメモリーが無くなったから。水城さんのアドレスが分からなくて」
『あ、ごめんね。携帯の連絡先じゃなくても良いの。ほら、家電とか。住所とか』
「え。住所? あ~、うん。ちょっと待ってね?」
住所なら分かると思った。



