ボーダーライン。Neo【下】


 母の手伝いが済んだところで、携帯が鳴った。ディスプレイを見ると美波からだった。

 すぐに部屋へと引っ込み、回線を繋いだ。

「もしもし? 美波、どうしたの?」

 美波とも、檜と同じぐらいの頻度で連絡を取り合っていた。逐一近況を話しているので、H出版社の記者が来た事も報告済みだ。

『ごめんね、サチ。急で悪いんだけどさ、教えて貰いたい事があって』

「……え、うん? 何? あたしで分かる事だったら」

 美波の声はやけに慌てていた。

『その、何でか理由は聞かないで欲しいんだけど。水城 奈々ちゃんの……連絡先って分かるかな?』

「え? 水城さんの??」

『うん。個人情報漏洩だって文句は無しね?』

「……うん」

 ーー何でだろう? 何で水城さんの? でも、理由は聞かないでって言ってるし。きっと美波の事だから、仕事に関する事ね。

 とは言え、番号が分からない。

「あー……、えっと。あたし、携帯のメモリーが無くなったから。水城さんのアドレスが分からなくて」

『あ、ごめんね。携帯の連絡先じゃなくても良いの。ほら、家電とか。住所とか』

「え。住所? あ~、うん。ちょっと待ってね?」

 住所(それ)なら分かると思った。